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出資先 株式会社ACSL
鷲谷社長: この6月に日本郵政キャピタル株式会社(以下、日本郵政キャピタル)様および日本郵便株式会社(以下、日本郵便)様と資本提携を含む新たな業務連携契約を締結したのですが、日本郵政グループ様とのつながりは今回が初めてではなく、2017年にまでさかのぼることができます。日本郵便様と技術提携し、ドローンを配送業務に生かしていくための技術実証を段階的に進めてきました。2018年からは福島県で郵便局間をドローンで配送するというテーマで、2020年からは東京の奥多摩で郵便局から各家庭などに郵便物や荷物を配送するというテーマで技術実証に取り組ませていただいています。これらによって技術的な見通しはある程度明るくなってきていたのに加え、2022年に改正航空法が施行されることで住宅地などでもドローンの目視外飛行が可能になることも合わさり、きちんと安全性が示されたドローンなら合法で物流にも利用できるようになります。そのため、郵便事業においてもドローンを活用いただけるようになると思いまして、これまでの技術提携よりも一歩深い連携に踏み込ませていただきました。
上田部長: 私どもは2016年から配送高度化という取り組みを進めていました。ドローンだけではなく、配送ロボットや自動運転車を活用して省人化配送の実現に向けて検討してきました。今後は労働力不足など、郵便・物流事業を取り巻く環境が極めて厳しいものになると考えていまして、その変化を見据えて、新しい技術の積極的な活用を株式会社ACSL(以下、ACSL)様と取り組んできました。ドローンに期待しているのは、中山間地域での配達の効率化です。ポツンと一軒家が点在しているような集落が日本には数多くあり、人が配達を行うとかなりの移動距離や高低差があることから、なかなか効率化を進められませんでした。この問題をドローンは解決に導いてくれるのではないかと考えています。
鷲谷社長: 今回の連携によって関係が深まる点は大きく分けて2つあります。1つはドローンによる郵便・荷物の配送を実用化、社会実装していくためにしっかりと専用の機体を作っていける点です。これまでは従来から我々が扱っていた物流機体を流用するというアプローチだったのですが、これからは郵便事業・宅配事業のノウハウもいただきつつ内容をしっかりと把握してそれに応えつつ、さらに航空法改正に伴う新しい法規制にも合致している機体および周辺システムを作っていけますので、その点は加速していくと思います。もう1つは、私どもは上場したばかりの若い会社ですので、日本郵政キャピタル様から資本を出資いただけたことは、単純に開発資金という意味だけではなく中長期的に企業価値を向上していくための利点にもつなげていけることです。
上田部長: 鷲谷社長がおっしゃったように、ACSL様とは2017年から配送高度化に向けて一緒に取り組ませていただいています。2022年度に改正航空法が施行されれば、いよいよドローン配送の社会実装が現実味を帯びてきます。ACSL様はすでに、私どもが求めているものや業務内容に対する知見を十分得られていますので、比較的早期にシナジーを創出しやすいと考えています。そういった土壌がすでにあった中で、今回ACSL様より日本郵政キャピタルとの資本提携および弊社も含めた業務提携のお話をいただいた次第です。
鷲谷社長: 日本郵政キャピタル様の取り組みについては存じ上げていましたので、まずは私どもの方から出資を受けることは可能かどうかについて打診をさせていただきました。
連携先 日本郵便株式会社
鷲谷社長: ドローンによる配送や物流の分野は、まだその多くが実証実験に留まっています。これを何よりも早く社会実装させて日常的に活用いただけるところまで持っていくことが、ドローン産業を立ち上げる上で極めて重要です。ですから、それを今回は主眼に置いています。ドローンによる配送は離陸から着陸までを事前に指定して、ほぼ自動で動かしています。一般的にイメージされるような、スティックを使って機体を運転して、ということは実はしていません。ただ、航空法上は運航をきちんと管理しなければならないことになっていますので、自動とはいえ人が見ている状況で運航するようにしています。
上田部長: 町から外れているような地域では谷のように高低差が激しい場所もあり、そういうところでは人の手によって配達を行う場合は回り道をしないといけません。今、ACSL様と技術実証を行っている東京の奥多摩にはダムがあるんですが、そのダムの周囲にも民家が点在しているという状況です。人が配送を行う場合はかなりの長距離を移動しなければならないのですが、ドローンによる配送によりダムを横断するだけでよく、短時間で効率よく配送できるようになります。これはすでに2020年度に実証済みですので、技術的な課題はある程度クリアできています。
鷲谷社長: 現時点でも弊社のドローンは40kmほど飛行でき、最低でも5kgの荷物を運ぶことができます。とは言え、できないこともまだまだたくさんあります。目先で解決しなければならないと感じているのは、もっと長い距離の飛行を可能にすることと、もう少し重たい物を運べるようにすることです。このくらいはできないと本当の意味で郵便・荷物配送事業の代替にはなりません。今後2年くらいかけて、この課題を仕上げていきたいと考えています。
鷲谷社長: 今回日本郵政キャピタル様に出資を打診したのですが、契約をクロージングし、かつプレスリリースまで持っていくスピード感は、これまで資金調達でシリーズA、シリーズBとやってきましたがそれを加えても過去最速だったのではないでしょうか。これはかなりすごいことだと思っています。これまで技術提携してきました日本郵便様から私どもの事業の中身をご説明いただけたということもある上に、ドローンのようなまだこの先どうなるか分からない新技術に対しても早い段階から「高い目標」のようなものを掲げていただけたのかな、と感じています。弊社も含めた3社でワンチームとして契約を迅速に進めていけた裏には、日本郵政グループ様のそういうマインドがあったように思います。実際、日本郵政グループ様からの出資ということでかなり高いデューディリジェンスの要求や契約の調整が必要になるかもと思っていましたが、素案の段階からすごく現実的なラインを提示していただけましたので、早期に合意を達成することができました。そういう意味では、日本郵政キャピタル様はスタートアップ企業にとっては最良のパートナーだと思います。
上田部長: 今年は、郵便創業150周年の年となります。私どもは今、特に物流分野でオペレーション改革というものを進めています。既存の業務の効率化だけではなく、新しい技術を活用し、スタートアップ企業等と実証実験を繰り返し行い、これまでのオペレーションを抜本的に見直そうという取り組みです。まさにACSL様のような、原石となる企業さんに参画いただいています。今回初めてこの取り組みを知ったというスタートアップ企業さんにも、ぜひ参画していただきたいですね。
日本郵便株式会社と日本郵政キャピタル株式会社、そして株式会社ACSL(当時は株式会社自律制御システム研究所)の3社で、郵便・物流領域での連携強化を目的に2021年6月に業務提携契約を締結。具体的には日本郵政キャピタルはACSLに株式を引き受ける形で出資し、日本郵便とACSLはドローンを用いた郵便・荷物の配送業務の実用化に向けた連携を行う。
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